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#2 社員に問題があっても簡単には解雇できない!
岩沢:Nさん、お気持ちお察しします。しかしヒドイ社員ですね。
まあ、何か事情があるのかもしれませんが。
Nさん:そうですね。しかしほとほと困っています。
こちらが関係性を改善しようとしても、向こうにその気がないんですから・・・
どうしたらいいですかね?
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岩沢:少し解雇を取り巻く法制についてご説明しましょう。
まず、解雇と懲戒解雇の違いですね。
解雇とは、会社側から労働契約を終了させる行為です。
その一形態である懲戒解雇は、労働者側に大きな問題があったために、懲罰として労働契約を終了させる行為です。
Nさん:なるほど。この場合、Hを懲戒解雇することは難しいですか?
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岩沢:Hさんは企業秩序を乱すような行為を働いてはいますが、これで一発レッドを与えるのは難しいでしょうね。
では、懲戒解雇ではない、いわゆる普通解雇にできるかどうかですが、形式的には可能です。しかしながら、現実的には注意が必要です。
Nさん:それはどういうことですか?
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岩沢:労働基準法の定めによれば、30日前に予告をするか、もしくは30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払えば、解雇をすることができると定められています。
しかしながら判例では、労働者保護の観点で、解雇の理由が労働者にとって過酷すぎないかどうか、事情を考慮することになっています。※注
社会通念上、客観的に見て、解雇をするのもやむを得ないと判断されない限り、その解雇は無効とされてしまうんですよ。
Nさん:なるほど。
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岩沢:はい。なので、今回の件も、「あなたを解雇します」と通知して、本人が何も異を唱えるようなことをしないのであれば、事前に予告するか予告手当を支払うかすれば、問題はありません。
ただ、本人が何か言ってきた場合のことを考えると、今回の件はちょっとリスクが大きい気がします。
Nさん:そうなんですか・・・
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岩沢:一般的に、まずは軽い懲戒罰、例えば譴責・訓戒のような処分を課して、始末書をとり、オフィシャルに証拠が残る形で注意をします。
それでも問題行動が改められなければ、減給とか、さらに重い懲罰を与える。
それでも改められなければ、さらに重い懲罰、さらには解雇と、徐々にそういう方向に持っていければ、リスクは下がります。
会社としては、その社員の行動が間違っていることを何度もきちんとした形で伝え、悔いあらためるチャンスを与えた。それにもかかわらず改めなかったのは相当に労働者側に問題がある。そういう論理です。
Nさん:そういうことですか。しかし面倒ですね。
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岩沢:そうですね。しかし、現段階ではリスクを考えると、その方がセーフティですね。
リスクを承知のうえで、解雇に踏み切るというのも考え方としてはありますが。
Nさん:うーん・・・・・わかりました。まずは譴責処分として、始末書を取るところから始めようと思います。
岩沢:はい、その方が無難だと思います。手間はかかりますが、相手の出方を見ながら、少しずつ進めていきましょう。
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まずは、こんなアドバイスをしました。
よもやこの程度の話で終わるような状況ではないとも知らず・・・
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※注
この話の後、平成19年に労働契約法が成立し、文章としては明文化されました。
ただし、どういう場合が有効でどういう場合が無効かということまでは、規定されていませんので、程度の問題は判例の基準により判断することになります。
労働契約法
第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
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