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#5 あっせん開始通知書が届いた!
D社の社長とTさんは、Uさんと面談して、なぜ評価が低く給料を下げざるを
えないのか、内容をまとめた書面を提示して説明しました。
Uさんは不服そうながらも、その場はだまって帰っていきました。
後でわかりましたが、Uさんの面談での目的は、その書面を入手することであり、
その書面を手がかりに攻撃をしかけてくることでした。
しばらく経って後、Tさんから以下のようなメールが届きました。
┌────────────────────────────────┐
岩沢様
お世話になります。
以前よりご相談させていただいているU氏の件、添付の書面が届きました。
今件、あっせんに応じるべきか否かを含め、ご相談させてください。
D社T
└────────────────────────────────┘
添付ファイルを開くと、「あっせん開始通知書」でした。
「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」により「紛争調整委員会による
あっせん制度」が設けられています。
Uさんがこの制度により紛争解決のあっせんを申請したようです。
この制度は、労働者・使用者という紛争当事者の間に第三者(あっせん委員)が
入り、双方の首長の要点を確かめた上、紛争を解決する具体的なあっせん案を
提示する等して、当事者間の話し合いを促進することにより、自主的な解決を
図る制度です。
あっせん案は、その受諾が強制されるものではありませんが、当事者間であっせん
案に合意した場合は、民法上の和解契約の効力を持つことになります。
費用がいっさいかからないということと、基本的にはその場で合意か打ち切りが
はっきりするので、時間もかからないという特徴があります。
あっせんの手続に参加するのも参加しないのも自由です。
あっせん案に双方が合意しないことも、もちろんあります。
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Uさんが申請したあっせん申請書の内容を見ると、
「賃金は労働契約における重要な要素で、私の同意なく不利益に変更することは
できないはずである。会社から提出された『査定について』の記載には減給の
理由として勤怠の不良が挙げられている。これは懲戒のうちけん責処分が適用
されなければおかしい。減給処分に納得できないので、減給相当分、慰謝料、
帰郷生活資金の支払いを求める。」
というものでした。
Tさんから電話がかかってきました。
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Tさん:岩沢さん、先ほどメールした件なんですが、このあっせんに応じなか
ったらどうなりますか?
岩沢:このまま立ち消えになってくれればいいんですけどね。そうでなくUさん
があくまで会社に対して事を構えたいというのであれば考えられるのは、例えば
労働組合に加入して団体交渉を申し込んでくるということでしょうか。
もしくは、いきなり裁判というのも考えづらいですから、まずは労働審判の申し
立てをしてくるか、そんなことが想定できますね。
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Tさん:なるほど。実際あっせんに参加した方がいいのでしょうか?それとも
参加しても意味はありませんか?
岩沢:参加しなくても問題はありません。参加することのメリットは、こちら側
が、きちんと問題を解決する姿勢を持っているということを示せること。
そして、この先どう進むにしても、ある程度相手の手の内も把握することができ
るのはいいことですし、Uさんに主張するだけしてもらって、言うだけ言っても
うまくいきそうにないという印象を抱かせることができるなら、この後何も言って
こなくなる可能性はありますね。
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Tさん:そうですか。では参加するだけして、しっかりとこちらの主張をして
こようかな。
岩沢:はい、それも一手だと思います。こちらは今までの主張をあらためて
述べていくだけの話ですから。こちらの主張は仮に法廷で争うことになったと
しても、そうそう負けることはないと思いますし。
そんな話を経て、D社はあっせんに参加することになりました。
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