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#3 悪意を持つ相手にどうやって対抗していくか?


Kさん:そんな感じなので、6月の末日に翌月の話をする際、私と店長とYさんの3人で面談してお伝えしました。「Yさん、あなたのやりたいことと私たちのお店では、ニーズが合わないんじゃないですか?」って。でも本人は勤め続けたいと言います。それで、Yさんだけでなく2号店のスタッフ全員に対して、雇用契約書を結びました。

岩沢:それはどういう内容ですか?基本的には、今までの労働条件をそのまま書面にしたといったものでしょうか?

Kさん:そうです。ただ、Yさんは契約を結ぶことを渋りましたね。最終的には書いてきましたけど。それで結局1ヶ月後、7月末にこれで契約は更新しないということを伝えました。

岩沢:Yさんだけ契約を更新しなかったのですか?

Kさん:いいえ、2号店のパート社員は全員契約を更新しませんでした。

岩沢:直前になって契約書にサインしてもらったのは、1ヶ月後に辞めさせるためだったと勘繰られる可能性はありますね。更新しないと伝えたら、Yさんはなんと言ってきましたか?

Kさん:不当だと言っていました。こんなもの、出るところに出ればどうにでもなるとも。そして7月27日から29日まで、一方的に有給休暇を取ると言って休み、それから出勤せず音沙汰がなかったのです。

岩沢:なるほど。そういうことですか。概ね事情はわかりました。ところでKさん、この団体交渉申入書は先方から送られてきてからずいぶん経ってますね。

Kさん:はい。

岩沢:この状態で待たせるのは良くないので、まずは団体交渉の日程だけ決めて、先方に伝えましょう。こちらが対策を練ることができるだけの十分な時間が取れ、先方もノーとは言わないくらいの時期・・・そうですね、2週間後くらいを目途に。また先方は自分のところの会議室を指定していますが、それは避けてください。公民館などの公共の施設を調べて予約していただけますか?向こうにペースを握られたくありません。ダラダラと話し合うような状況に持ち込まれるのもイヤです。1時間とか2時間とか、時間がきたらスパッと終えられるようなところがいいですね。

Kさん:わかりました。手近なところで探してみます。

岩沢:あとは、いかにして団体交渉に向けて準備をしていくかということですね。こういうことは証拠集めが勝負の鍵となります。われわれが主張していることが正しいということを証明できる証拠を、第三者が見て間違いないと思わせるくらい、いかに多く集められるかが鍵です。

Kさん:なるほど。

岩沢:今回のポイントとなるのは、おそらく3つだと思います。まずは、契約が1ヶ月という期間を定めたものであることです。残念ながら、7月になるまで雇用契約書は交わしていなかったわけですよね?書面という証拠はないけれども、実態として1ヶ月契約だったことをうかがわせるようなものがないかどうか。メモでもなんでも、何かした残っていればそういうものを探しておいてください。例えば、採用当時の募集広告とかはないでしょうか?

Kさん:ちょっと探してみます。

岩沢:募集広告に、1ヶ月更新だということが書いてあれば、有力な証拠になりますね。そういう約束入社したということが明確になりますから。他はどうでしょう?毎月、翌月の勤務をどうするか、面談をしていたんですよね?

Kさん:はい、基本的には店長が毎月月末に話をしています。Yさんについては、私が同席したことも数回あります。

岩沢:何か記録は残っていないですか?何月何日の何時頃に、どういう話をしたとか。手帳を見て記憶をたどって、書き出していただいても構いません。

Kさん:多分わかると思います。帰って調べてみますね。

岩沢:お願いします。2つ目は、Yさん問題社員だったという証拠です。Kさんはもちろんのこと、社内のみなさんにもいつ頃どんな問題行動があったのか、思い出してメモ書きにしてくれませんか?

Kさん:わかりました。みんなにもお願いしてみます。

岩沢:お願いします。3つ目は、2号店の業績に関する資料です。パートさんに辞めてもらわざるをえない状況であったとわかるような、何か客観的な資料をお預かりすることは可能ですか?

Kさん:はい、店舗ごとに管理している資料がありますので、そちらをお渡しすることは可能です。

岩沢:では、お願いします。用意できたものから順次送っていただけますか?団体交渉の日まで頻繁に連絡を取り合って、可能な限りしっかりと対策を講じましょう。まずは会場を確保して、団体交渉の日取りを決めるところからですね。

Kさん:はい、わかりました。ではまたご連絡します。

初回の打ち合わせを終え、Kさん側に大きな問題があるわけではなさそうだと感じました。今までは良くも悪くも家族的な経営をしていて、話が通じる相手なら問題にはならないようなことが、悪意のある甚減に遭遇してしまったために、組織として整備されていない部分を突かれて、トラブルになってしまったのだろうと。Kさんの真摯な態度を見て、何とか力になりたいと思いました。

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